先日ビジネスプラン(日本の修士過程で言う修士論文のような扱い)のプレゼンテーションが終わり、ESADE MBAでの全課程が修了しました。私は15か月を選んだので、12月でESADE MBA生活が終わりなのです。
忘れないうちに、ESADEでの日々を通じて私が 感じたこと、考えたり悩んだこと、MBA取得前後で大きく変わったことを、大きく2つのテーマにまとめてみようと思います。
1.コミュニケーションの重要さ
1って数字を打ったけど、内容は3つあります。1つは「異なるバックグラウンド(国籍、文化、職種など)」間のコミュニケーション、2つ目は「発言してなんぼ」というスタイル、そして3つ目は英語についてでです。
私は前職で機械エンジニアだったこともあり、「コミュニケーション能力」は相対的に重要視されなかった環境下だったように思います。エンジニアはサイエンスを基盤にする点で他の職業と少し異なる点があります。すなわち理論的に正しいものを積み上げて答えにたどり着けば、必ず論理的に正しい(※)ので周囲は結果に納得します。そして少なくとも日本ではこの過程は「不言実行」が好まれます。そりゃそうだ、口だけで何もしないエンジニアなんて価値無いですからね。
(※理論的に正しいものは論理的に正しいですが、論理的に正しいからと言って理論的に正しいとは限りません。私は初めこの関係が区別されない会話に苦労しました。。。)
ただ、ビジネスではそうはいかないです。会社では様々な部門の意見をまとめてより良い解(必ずしも論理的とは限らない)を作ります。正反合ではないですが、ダイバーシティに富んだ環境をまとめてより質の高いアウトプットを出せるかが重要です。そして私のMBAを目指した理由の1つもそのスキルの訓練でした。前職では、ビジネスではこのことが重要と分かっていても、部門ではやはりエンジニアリング的な解が重要ですから。が、やはりMBAで慣れない考え方の人と働くのはストレスが大きかったです。お前の言うロジックは単なる詭弁だと何度言おうと思ったか。
そんな中でどうやってアウトプットを出して行くのか。私はアウトプットの出し方としては「強みにフォーカスする」というのは1つの答えかと思います。少なくとも私はこれで通しました。計算が速いとかオペレーションが得意とか、そういった点でチームに貢献する。各メンバーの視点や経験、強みの違いからアウトプットの質を上げる要素が生まれ、これを合わせて答えの質を高めて行く。とても良い経験でした。
2つめの「発言してなんぼ」ですが、これは今までの価値館を根こそぎ崩されるような経験でした。口は出すけど何もしない奴の多いこと!!が、この「とにかくしゃべる」「自分を出して行く」ことこそがグローバル社会で生き残る方法なのでしょうね。幾ら準備しれも結果に反映されなければ貢献度はゼロです。ESADEはダイバーシティに富んでいて協調的な雰囲気なので、日本人のように不言実行タイプでも受け入れてもらえます。でも実際グローバルのビジネスの場だったら、発言しないのは存在しないも同然なのかも知れません。
この「発言してなんぼ」の変形ですが、「とりあえずダメ元で交渉してみる」というマインドセットもかなり新鮮でした。私の前職の会社は工場実習というのがあり、そこでは「やってみてから考えろ」という教訓(?)がありました。それに通じるものもあって興味深かったです。ESADEは何かやりたいと言えば出来る環境です。実際にダメって言われててもダメ元で言ってみる/やってみる。日本人感覚だとルール破るその行動ってどうなの?と思いますが、行動して扉を開けて成果を出せば評価されるでしょう。私も2年生になってInnovation Summitを手伝わせてと頼んだりと色々動いてみましたが、それでも未だ腰が重いです。これからの要改善ポイントです。
最後の英語に関しては、いわゆる「純ドメ」と言われる人なら誰もが経験することでしょう。英語が聞き取れない、それ以上に話せない、話しても発音が悪くて聞き返されるし、相手が呆れたような表情を見せる。ネイティブとは喋るのも怖い、みたいな。クラスで発言してもしーんと静まり返って、別のクラスメートが私が言った内容を「通訳」してくれたり。初めのうちは本当に恐怖でしかなかったです。まあでもそう言ってても仕方ないな、と思ってどこかで吹っ切れた気がします。
2.短い時間と少ない情報から答えを出すというスタイル
1年生の時にアカウンティングの教授(Bisbe)が「君たちは会計士になって会計の仕事をするんじゃないんだから、アカウンティングの細かいことは忘れても良い。だた、これらを用いて経営の意思決定をしないといけいないのだから、その訓練をしなさい。」というようなことを言ってました。MBAの授業ってこの為にあるんだと思います。
エンジニアだった私は完璧主義の傾向が強いです。というか、車とか製品によっては人の命がかかってるわけですし、機械のエンジニアは完璧主義でも足りないくらいの職業だったのかもしれません。
そんな中でケーススタディのような「短い時間と少ない情報から自分のスタンスを取って答えを出していくスタイル」は新鮮でした。そして私は長い間このスタイルに慣れずにとてもしんどかったです。こういった意思決定って「答え」は無いです。自分でスタンスを取って少ない情報から裏付けて行くわけですから。でもケースの問題を解いている時に、「答え」なんて無いと分かっているのにどこかで 「答え」を探してる自分がいて、時間がかかる割には質の悪い結果しか出せていませんでした。
そんなわけで、MBAに来て良かったなと思うことの1つに、このスタイルの訓練が出来たことがあります。今までの仕事とは180度違った考え方で結果を出して行くという経験はとても大きかったです。多分この訓練って、私がエンジニアだったからというだけでなく、他のバックグラウンドの人にとっても多かれ少なかれとても良い経験になったんじゃないかなと思います。しかし、私に取っては本当に 良い「練習」になりました。
細かい点を挙げればキリが無いですが、私に取っては上の2テーマは大きな学びでした。
海外MBAの醍醐味は異なるバックグラウンド(国籍も職種も)のエリート達が集まるという点です。知識だけなら本で学べますが、ソフトの部分(実際の経験談や雰囲気)を学ぶのは難しいです。またマイノリティというかアウェーというか、そういった環境下で英語で自分の価値を出して行くというしんどさは本当に良い経験でした。
正直、30歳を過ぎて何でこんなに苦労を…と思ったこともありましたが、そういった努力の後では色々な面で視野が広がったり深まったりしたと思います。卒業して社会人に戻りますが、是非ESADEで学んだことを活かして活躍して行きたいです。